vol.07 【相談の一歩をもっと身近に】
今回は、日本癌治療学会のポスターセッションで発表した内容をもとに、「もっと身近な支援の場」を皆さんと考えたいと思います。
『現状、がんセンター相談支援センターの利用率は1割に満たない』
実際のがん相談支援センターの利用割合を見てみると、2015年では7.7%、2025年の調査結果でも、9%と1割に満たないことが示されています。
相談したい先として挙げた患者さんも14.7%未満。さらに、3割弱の患者さんが「相談した先がない」と回答しており、相談そのものが十分になされていない現状がうかがえます。
一方、がん相談支援センターを訪れた患者さんからは、「医療費の心配が解消し経済面で安心感を得た」、「不安を受け止め、一緒になって考えてくれ、心の支えとなった」といった声が寄せられ、その利用者満足度は81.4%(2015年)と高いことが分かります。
『なぜ、がん相談支援センターに足を運ばないのだろうか?』
そこには「3つの壁」があると考えました。
1. 情報不足:「相談支援センターを知らなかった」人が最も多く、相談窓口の存在や利用法が分かりにくいこと。
2. 相談内容の曖昧さ:診断後の混乱の中で「何を相談すればいいかわからなかった」こと。
3. 心理的な抵抗:「人に頼ってはいけない」という思い込みや「他人に話すことへの抵抗感」。
『これらの課題に対する3つの提案』
1. 心理的ハードルの低減。 患者さんには困ったときに助けを求めても良いことを知っていただく必要があります。
2. 多職種連携によるアプローチ。 患者さんの不安や分からないことを専門スタッフがチーム全員でサポートし、正しい判断ができるよう支援します。これにより、患者さんの気持ちや生き方を医療チームで共有し、適切な治療選択を支援します。実際に、この体制でセンターへの訪問が6割になった施設もあります。
3. Shared Decision Making(SDM)の推進です。 患者さんが「自分の本当の生き方や気持ちに気づく」ことを促し、自ら医療者に生き方を言えるようにサポートします。医師と生き方について対話できた患者さんの、治療選択への関与満足度は高いことが示されています。

〜対話による患者さんの治療選択への満足度に関するアンケート結果から〜
患者さん自らの「声」は、自分らしく生きるための大切な羅針盤とも言えます。それを伝えることは、決してわがままなことではなく、自分自身を大切にするための第一歩であることをぜひ患者さん自身にわかってほしいのです。
『生き方を医療者に伝えることができるようにサポートしてくれる身近な場がほしい』
ある患者さんからは、
「相談って堅苦しい。何を相談していいかわからないのに相談とみると敷居がたかい。何か頼りたい!何か話をしたい!知りたいと思う場が欲しい」
そして、「また来たいなあ」と思ってもらえる場であることが大切だと。

皆さんのカフェでの経験やご意見をどうぞお聞かせください。
vol.06 自分の生き方をもっと声に出そうよ
🌱『生き方』の上に治療がある。それは言わないと伝わらない。
がんの治療は日々進化していています。医師は検査結果や病態からエビデンスをもとにして治療法を説明してくれます。そして患者さんと一緒に治療選択の決定(S D M)へと進みます。その時に、「これからの生き方」に沿った治療を選択するために患者さん自身の生き方を伝えることがとても大切になのです。
患者さん自らの「声」は、自分らしく生きるための大切な羅針盤とも言えます。それを伝えることは、決してわがままなことではなく、自分自身を大切にするための第一歩であることをぜひ患者さん自身にわかってほしいのです。
🌱 日本がんサポーティブケア学会の教育講演でお話した内容から、生き方を話さなかった患者さんの治療選択への満足度は低い傾向にあることです。
生き方の共有〜アンケート結果から〜
🌱もう一つ伝えたいことは、それぞれの生き方や気持ちを医療者に伝えることができるようにサポートしてくれる方や場がたくさんあることです。
vol.05 生き方の上に、治療がある時代へ
患者と医療のパートナーシップ、『対話による共同意思決定』
みなさん こんにちは
暑い日が続きます。私事ですが、共同意思決定の支援活動をしつつ、その環境作りのために健康経営エグゼクティブアドバイザーの資格取得への勉強と、心理カウンセラーの勉強をして患者さんの相談にもっと応えられるようになんとか頑張っています。
最近の出来事では、患者さんから相談を受けた後で、患者さんから“またお会いするのを楽しみにしています”と言われ、「やっていて良かったな」と思いました。
それでは本題に。。
最近疾患を問わず、『共同意思決定』(S D M:Shared Decision Making)という言葉を見聞きすることが多いと思いませんか。
患者と医療者が協力して治療方針を決める過程を意味します。言い換えれば、患者さんは自身の治療への考えや価値観(これからの生き方)を医療者と共有し、医療者は専門的な知識と経験をもとに、患者さんの考えや価値を理解し、それを支援することでその患者さんに最適な治療選択を提案するということなのです。
そのためには患者さんと医療者の対話があってはじめて実現するものなのです。
特に癌治療においては、SDMの重要性がますます高まっています。
「共同意思決定が生まれた背景について」
患者さんの知る権利を明文化したIC(インフォームドコンセント)からSDMへ
少し昔に遡りますが、I C(インフォームドコンセント)は1970年代にアメリカで患者の権利章典として生まれました。1970年代の医療の出来事と言えば、高齢者医療費支給制度が創立され、70歳以上は医療費自己負担が無料化(今は2割負担)やアメリカでX線C T装置が開発された年になります。日本ではフォークソング(吉田拓郎、森山良子等々)が流行した年で、私もフォクギターを購入して友人と歌いました🎵。話を戻して、I Cは、患者さんが知りたいと望めば十分な情報を提供し、患者さんがそれを十分理解した上で治療に同意することと定義されています。
しかし、時間制約やがんと言われて混乱している状況で患者さんが知りたいことを十分質問できないまま医療者側からの説明だけで患者さんが同意する一方向性が多かったと言われています。
その中で、I Cを基盤にしたSDMが提唱され、日本でも2000年代から明文化され始めました。
対話を通しての共同意思決定(S D M)の重要性
患者さんが医療者との対話を通して治療に関与できたと実感できることで、治療に専念でき、治療効果が向上する可能性があると言われています。
また、共同意思決定は医療者にとっても重要で、医療者は患者の価値観や希望を理解し、それを支援することで、より適切な治療を提供することができ、患者との信頼関係を築くことで、医療の質が向上することが期待されています。
「現状について」
SDMの現実をより正しく理解するために
S D Mが本格的に普及し始めて25年が経過した現在、患者さんとの会話で、S D Mが十分普及しているとは言えない現状があることを実感しました。様々な疑問が頭の中を駆け巡りました。
患者さんは医療者に治療への希望を話せているのだろうか?
患者さんは自身の生きかたを医療者に話せているのだろうか?
医療者は患者さんの生き方に耳を傾け、それを支援しているのだろうか?
患者には患者さんの考えや思いがあり、医療者には医療者の思いがあり、時に思い違いもあることをお互いに理解しているのだろうか?
患者さんは医療者と対話する前に、自身の考えや生き方、知りたいことを知れる場を必要としているのではないか?
・・・・・
こういった現在のS D Mの現状を分析したデータが必ずしも十分とは言えません。
そこで直近のS D Mの現状と課題を明らかにするため、調査を実施し分析しました。
その内容についてオンラインのライブで解説し、皆さんのご意見を共有したいと思います。
また、コラムに対するご意見もお寄せください。



