vol.03 日本における漢方薬の立ち位置
漢方は古代中国医学に起源を持ちますが、中世以降、日本の風土や日本人の体質に合うように発達しました。日本に伝来したのは飛鳥時代です(西暦592年 – 西暦710年)。それから日本文化の発達とともに漢方も進歩しました。中国では王侯貴族の診察をするのは脈を診るくらいで、ほとんど問診で治療方針を決めていました。しかし、日本では長屋に住む「赤ひげ先生」のように、庶民の味方のような医師が「どれどれ」と、町民のおなかを診察し、漢方処方を決めていました。こうして「腹診」は日本で開発され、進歩しました。
現代では血液検査・画像診断などが発達し、その中で漢方製剤が使われています。さらには新しい抗がん剤が次々と承認され、そのような新薬と漢方が併用されます。以前には考えられなかったような時代になっています。
1967年以来漢方エキス製剤が保険診療に取り入れられ、広く臨床に普及しています。現在148種類の医療用漢方製剤が保険診療で使えます。
漢方製剤を有効に安全に使うには、学生時代からの教育が重要ですが、西欧化を推進する明治政府によって漢方が公式の医学教育から除外されました。しかし、2001年医学教育モデル・コア・カリキュラムに漢方医学 (和漢薬)が明記され、全医学部で教育されています。最新の2022年度改訂版p58では「和漢薬(漢方薬)の特徴や使用の現状について概説できる」と薬物治療の基本原理の項目で記載されています。
vol.02 医療用漢方・OTC漢方・漢方薬局調剤漢方の違い
vol.01 漢方薬のイメージ(プラス、マイナス両方の観点から)
皆さんには「漢方」という言葉を聞いて、プラスのイメージとマイナスのイメージが浮かぶのではないでしょうか。プラスのイメージとしては、病院では保険が効くので費用負担が少ない、自然の生薬からできているので体に良い印象、西洋薬にはない効果が期待される、エキス製剤は携帯できて便利である、最近はなぜ効くのかが科学的に解明されてきた、日本の漢方エキス製剤は高品質である、漢方を知っている医師は良く話を聞いて診察してくれる、などでしょうか。一方、マイナスのイメージとしては、薬局で買うと値段が高い、顆粒製剤が飲みにくい(味と匂い)、薬の量が多い、煎じ薬と思ってしまう、なぜ効くのかよくわからない、古くさい薬、漢方のことを知らない医師・薬剤師・看護師がいる、食前の服用のため飲み忘れる、などですか。皆さんが病院で処方してもらう漢方薬は「医療用漢方製剤」です。保険診療なので患者さんの負担は軽く、日本薬局方(やっきょくほう)という法令に基づく生薬が使われ、西洋医学的診断がなされた上に医師が処方します。一方、ドラッグストアで買うのが「一般用OTC漢方製剤」です。OTCとは、over-the-counter(カウンター越しに)という意味で、ショッピングのように処方箋なしで買うことができます。しかし、自費購入なのでかなり高価な印象があります。さらには「漢方薬局調剤漢方製剤」もあります。まず、このような「医療用漢方製剤」の特徴を知って頂きたいです。