vol.5 生き方の上に、治療がある時代へ
患者と医療のパートナーシップ、『対話による共同意思決定』
みなさん こんにちは
暑い日が続きます。私事ですが、共同意思決定の支援活動をしつつ、その環境作りのために健康経営エグゼクティブアドバイザーの資格取得への勉強と、心理カウンセラーの勉強をして患者さんの相談にもっと応えられるようになんとか頑張っています。
最近の出来事では、患者さんから相談を受けた後で、患者さんから“またお会いするのを楽しみにしています”と言われ、「やっていて良かったな」と思いました。
それでは本題に。。
最近疾患を問わず、『共同意思決定』(S D M:Shared Decision Making)という言葉を見聞きすることが多いと思いませんか。
患者と医療者が協力して治療方針を決める過程を意味します。言い換えれば、患者さんは自身の治療への考えや価値観(これからの生き方)を医療者と共有し、医療者は専門的な知識と経験をもとに、患者さんの考えや価値を理解し、それを支援することでその患者さんに最適な治療選択を提案するということなのです。
そのためには患者さんと医療者の対話があってはじめて実現するものなのです。
特に癌治療においては、SDMの重要性がますます高まっています。
「共同意思決定が生まれた背景について」
患者さんの知る権利を明文化したIC(インフォームドコンセント)からSDMへ
少し昔に遡りますが、I C(インフォームドコンセント)は1970年代にアメリカで患者の権利章典として生まれました。1970年代の医療の出来事と言えば、高齢者医療費支給制度が創立され、70歳以上は医療費自己負担が無料化(今は2割負担)やアメリカでX線C T装置が開発された年になります。日本ではフォークソング(吉田拓郎、森山良子等々)が流行した年で、私もフォクギターを購入して友人と歌いました🎵。話を戻して、I Cは、患者さんが知りたいと望めば十分な情報を提供し、患者さんがそれを十分理解した上で治療に同意することと定義されています。
しかし、時間制約やがんと言われて混乱している状況で患者さんが知りたいことを十分質問できないまま医療者側からの説明だけで患者さんが同意する一方向性が多かったと言われています。
その中で、I Cを基盤にしたSDMが提唱され、日本でも2000年代から明文化され始めました。
対話を通しての共同意思決定(S D M)の重要性
患者さんが医療者との対話を通して治療に関与できたと実感できることで、治療に専念でき、治療効果が向上する可能性があると言われています。
また、共同意思決定は医療者にとっても重要で、医療者は患者の価値観や希望を理解し、それを支援することで、より適切な治療を提供することができ、患者との信頼関係を築くことで、医療の質が向上することが期待されています。
「現状について」
SDMの現実をより正しく理解するために
S D Mが本格的に普及し始めて25年が経過した現在、患者さんとの会話で、S D Mが十分普及しているとは言えない現状があることを実感しました。様々な疑問が頭の中を駆け巡りました。
患者さんは医療者に治療への希望を話せているのだろうか?
患者さんは自身の生きかたを医療者に話せているのだろうか?
医療者は患者さんの生き方に耳を傾け、それを支援しているのだろうか?
患者には患者さんの考えや思いがあり、医療者には医療者の思いがあり、時に思い違いもあることをお互いに理解しているのだろうか?
患者さんは医療者と対話する前に、自身の考えや生き方、知りたいことを知れる場を必要としているのではないか?
・・・・・
こういった現在のS D Mの現状を分析したデータが必ずしも十分とは言えません。
そこで直近のS D Mの現状と課題を明らかにするため、調査を実施し分析しました。
その内容についてオンラインのライブで解説し、皆さんのご意見を共有したいと思います。
また、コラムに対するご意見もお寄せください。
vol.4 相談しようよ 自分の気持ちを口に出して話してみようよ=相談
🌱相談は「弱さ」ではなくて「強さ」
🌱一歩踏み出すことで、心が楽に
🌱相談することが未来を変えるかも
心の中にある不安や疑問はたくさんあるのに、どう話していいかわからない!
話すことで、「弱いと思われたくない」「相手に迷惑かも…」って思っていませんか?
そんな遠慮はいらないですよ。
どうやって相談(不安や悩み、自分の価値を話してみること)すればいいかのヒントを共有したいと思います。参考にしていただければ幸いです。
みなさんの工夫も教えてください。
☘️ 相談することでどんな効果があるのでしょうか。
🌱 頭に描いているイメージを言葉に変えることで、見えてくる。
🌱 心のわだかまりを吐き出すことでスッキリする。
☘️ 相談しないとどんなリスクが・・
🌱 我慢すればなんとかなると思っていると、余計なことを考えてしまい悪い方向に・・
🌱 独りよがりになり間違いっていることに気づかなくなることも・・
🌱 話さないでいると誰にも気づいてもらえない、誰も助けてくれいないと思い、孤立してしまうことも・・ ストレスがたまっていく・・
☘️ 話すことへのちょっとした工夫をしてみませんか
相談するのにちょっとした準備をしてみると、話すことが楽になることも・・
メモに短い言葉で書くのもいいし、手書きのイラストでもいいですよ
🌱 今の自分の気持ちを整理してみよう(希望でも価値でも)
🌱「これからどうしたいか」を考えておくと話しやすいよ!
例:『仕事は生きる力』 職場の理解を得るサポートが欲しい。。
☘️ どんな人に相談すればいいのか?
初めて相談する人を判断するのは難しいですが、少し話しただけでも判断できることがあります。
🌱 共感してくれる人かどうか・・
―共感は言葉だけでなく態度で受け入れてくれる。←自己開示してくれる。
―否定せずに聴いてくれる。←自分の言葉に置き換えて、受け入れようとする姿勢
例:痛みの訴えに対して。『そうなんですね』より『それは辛かったね』『私にも同
じ経験があります』とか・・
🌱 信頼できる人を選ぶ(医療者、家族、専門相談者、友達など)
医療者じゃなくてもいいのです。専門知識の教育を受けた人に相談してみてください。直接会うのもいいですし、オンラインでも。
医療者以外にしっかりと教育を受けた相談相手はたくさんいます。
看護師、薬剤師、日本癌治療学会認定がん医療ネットワークナビ、社会福祉士
ピアサポーター 等々
わたしの願いは・・
生き方はひとりひとり違うものです。それを口に出して話してほしいのです。
心の扉を開いて不安、疑問や生き方への考えを話すことで、自分の言いたいことをはっきりできて、それを医療者との対話に活かし、治療選択に参画して、治療に専念できるように患者さんと医療者の架け橋になります。遠慮なく相談してください。
vol.3 学会紹介:患者さんも市民も参加しやすい日本がんサポーティブケア学会の紹介
この学会の役割は、『がん患者に対する質の高いサポーティブケアを推進し、がん治療における全人的なアプローチを提供する』。
とありますがなんだか難しいですよね。簡単に言えば、「がん患者への高品質なサポートを提供し、治療を包括的に支えるための活動を行う学会」です。
● がん患者の生活の質を向上
がん随伴症状や癌治療の有害事象の発生予防に関して、診断から治療中も含め治療後も含めて精神的あるいは身体的な症状へのケアを医療者だけでなく、がん教育を受けて認定された相談員、看護師、薬剤師、市民が一体となって行うことです。
・腫瘍随伴症状の管理
・がん治療の副作用(有害反応)の予防と治療
● がん治療におけるサポーティブケアの重要性を広く認識させる。
治療選択に際して、患者さんの治療に対する希望や生き方へのサポートについて対話を通して相互に尊重し、患者さんの不安を和らげ、疑問を解き、安心して治療に専念できる環境を作り出すことです。
・がんとその予後に関しての患者教育
・医療提供者と患者との心理的な隔壁をなくすための教育
・がんサーバイバーの精神・社会的な問題について支援する
もう一つの大きな特徴は、医療者だけでなく、患者さん、市民もたくさん参加していますので、患者さんの発表の場もあり、職種をこえていろいろな方との出会いも楽しめます。
日頃、画面を通してしかお会いしていない方々との出会い
● 彦田さんと会えた! そこからお友達にも輪が広まった。彦田さんは、人々を明るくするパワーの持ち主。
● キャンサーペアレンツの高橋さん! 実は、彦田さんとも繋がっていた。
● お世話になった先生から声をかけられサプライズ(嬉しかった)私の研究にも賛同していただき重ねて感謝
● 同じ志をもっている方との出会い
みまさん、必ず出会いと学びがあります。
2026年がんサポーティブケア学会
5月15日、16日 富山県民会館