一般社団法人がん哲学外来

コラム:がん哲学外来 会員向けセミナー

文責・桑島まさき/監修・宮原富士子

Vol.5 【がん防災を哲学で考える試み ~シリーズ1~】

一般社団法人がん哲学外来(通称「がん哲学外来」)は、「がん教育」の知識を高めることを目的にした会員向けセミナーを定期的に開催しています。2025年3月開催のセミナーは次の通りでした。

〇2025年3月30日(日) 16時~17時(WEB開催)
 講師: 青島敬二先生
(芳珠記念病院医師・がん教育認定外部講師・がん防災セミナー講師)
 講座: 「がん防災を哲学で考える試み ~シリーズ1~」

関東地方では、3/24に桜の開花発表があり、3/29頃満開予想がだされました。多くの方々が桜スポットでお花見を楽しんで(だ)ことでしょう。

会員セミナーでは第一回目にご登場いただいた青島啓二先生に、昨年5月【がん防災@人生百年時代、最低限の知識と備えでがんリスクを軽減する】というタイトルでお話していただきました。
がんになるリスクをさげる普段からの対策、いざがんに罹患してしまった時の患者としての治療の受け方、がんと仕事の両立、相談先や情報源など、また自身が罹患した時や周囲の人が罹患した時の対応の仕方など幅広く充実した内容でした。時間制限があるため大まかな説明にならざるを得ませんでしたので、好評につきシリーズ化し詳しくご紹介することになりました。日程は次の通りです。

【がん防災を哲学で考えてみる試み】

<2025年>
5/24土 16:00~17:00 がん防災前半 備え編 
青島敬二先生
7/19土 16:00~17:00 がん防災 お金のこと(宮原さんの体験)
青島敬二先生
9/27土 16:00~17:00  がん防災後半 自分がなったとき
青島敬二先生
11/22土  16:00~17:00 がん防災 治療と仕事の両立
青島敬二先生
<2026年>
1/24土  16:00~17:00 がん防災 身近な人がなったとき
青島敬二先生

急なケガや痛みに対応するために日頃からお薬や医学書などを常備したり、地震、津波、大雨などの自然災害に備えて食料品などを備蓄されたり、備えをされていることでしょう。
他人事と思っていたがんが自分の細胞の一部になる可能性は誰にでもあります。エステや美容医療の力をかりて気になっていたシワやシミを消すことはできますが、手入れを怠ると再び出現します。がんも一度で終わるとは限りません。がんに備える「がん防災」、まずは「がん防災マニュアル」や「防がんMAP」をじっくり読んでみることが大事かと思います。
  ※がん防災マニュアル https://www.gh-ouendan.com/ganbousai-blue

※ 次回は、5月24日(土)16時~17時開催です。

Vol.4 【大切な人の心に贈り物を残す・・・】

一般社団法人がん哲学外来(通称「がん哲学外来」)は、「がん教育」の知識を高めることを目的にした会員向けセミナーを定期的に開催しています。2025年2月開催のセミナーは次の通りでした。

〇2025年 2月23日(日) 15時~16時(WEB開催)
 講師: 坂野貴宏さん(高校教諭/愛知県在住)
 講座: 「春の香り~脳腫瘍と闘った春香からのメッセージ」

日本列島が寒波に見舞われた2月下旬、3連休の中日に会員向けセミナーが開催されました。この日の講演者は、脳腫瘍のために18歳の若さで亡くなった娘さんの生きた証を残すために、がん哲学外来主催の本講座の他さまざまな講座やイベントにご登場いただいている坂野貴宏さん。娘さんの壮絶な闘病、父としてどのように支えたか、“第二の患者”と呼ばれる家族のがんとの闘いについて話していただきました。

小中高という学生時代は、勉強に加え、友達を作り、部活や習い事をし、様々な出会いと別れを経験する時期です。病気や事故などの不運と無縁の世間一般の少年少女たちは、たくさんの社会体験を通して子どもから大人への階段を上っていきます。彼らのような時間を少ししか持てなかった娘の春香さんは、人生の大半をがんという病気と闘いながら過ごしました。度重なる手術や辛い抗がん剤治療でも弱音をはかず生きる希望を失わなかった春香さんの姿をみて、「家族の方が元気づけられた」と坂野さんは語ります……。

春香さんが亡くなったのは、2020年12月、すでに4年以上の月日が流れました。生前「人の心に何かを刻みたい」「人の役に立ちたい」と言っていた娘さんの言葉がずっと心に残り、坂野さんは仕事の合間にがん啓発活動に参加し、精いっぱい短い人生をかけぬけた娘の人生を形にしたいという思いから、奥さんとの共著で『春の香り』という闘病記を出版しました。講演の機会があると春香さんのことを話す機会を持ち、そういう時間をもつことで「いつも心の中に娘の存在を確認できる(た)、共に生きている」と語ります。
さらに、映画も製作され日本各地で上映されることになりました。

 ※本「春の香り」(文芸社刊)
   https://www.bungeisha.co.jp/bookinfo/detail/978-4-286-23856-2.jsp
 ※映画「春の香り」公式HP  https://harunokaori-movie.com/
   (3/7~東海3県先行ロードショー、 3/14~東京公開予定)

愛する人の死をうけとめるのは辛いことです。短い人生を終えた人はもっと無念だったことでしょう。残された人は、故人が生きた証をのこし、人々の記憶から忘れ去られることがないようにすることが使命ではないでしょうか。

※ 次回は、3月30日(日)15時~16時開催です。

Vol.3 【がんについて語り、考える機会づくり】

一般社団法人がん哲学外来(通称「がん哲学外来」)は、「がん教育」の知識を高めることを目的にした会員向けセミナーを定期的に開催しています。2024年9月開催のセミナーは次の通りでした。

〇2024年 9月29日(日) 15時~16時(WEB開催)
講師: 宮原富士子さん(薬剤師、一般社団法人がん哲学外来事務局担当理事、他)
 講座: 「がんについて語り、考える機会」

この日は、同日午前中(10時~12時)に台東区の生涯学習センターで開催された「みんなのがん教室 がんについて語り・考える機会づくり」に参加した宮原富士子さんが、当日のイベントを振り返り話してくれました。内容は、次の通りでした。

○学校で行われている「がん教育」 地域で行われている「がん哲学Café」
(宮原富士子)、
○がん教育を身近に 地域の図書館で開催しているみんなのがん教室
(小口浩美/一般社団法人LINKOS/がんサポートおむすび)、
○がんを哲学で語り合うCafé

主宰は、あさくさ緩和ネットワーク研究会、NPO法人HAP、ケイ薬局、勝海舟記念下町浅草がん哲学外来(以後、「がん哲カフェ」と表記)で、宮原さんは全てに関わっています。

台東区民の私は縁あって浅草のがん哲カフェに関わっており、これまで様々ながん哲学外来関連のイベントや講演会などに参加してお話をきかせていただきましたが、今回印象に残ったのは、「がん哲学外来はロゴセラピー」という言葉でした。「ロゴセラピー」とは、人が自らの「生の意味」を見出すことを援助する心理療法のことです。
2人に1人ががんに罹患し、3人に1人ががんのために死亡し、年間38万人の日本人が亡くなっているという事実。
がんが珍しい病気でなくなっただけに、がんと診断されても動じずに病気と向き合い、自分らしい人生を全うする……。そのためにはがんについて語りあう場所、立場をこえて交流する機会づくりが求められます。

現在、学校や図書館を中心に「がん教育」が行われ、地域で「がん哲café」が開催され、地域の公共機関などで「がん教室」が開かれています。がんについて語り合う場所が、自分の街の近くにあることで、病気や生きる意味について不安を覚えている人の問題解決の一助となれば――。居心地のいい場所が増え、必要な人に必要な情報が届き、穏やかな日常に過ごされることを願っております。

※ 次回は、10月27日(日)15時~16時開催です。

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