Vol.6 【私のいのちの使い方】
一般社団法人がん哲学外来(通称「がん哲学外来」)は、がん教育の学びを哲学で考える「哲学で考えるがん教育カフェ」を毎月開催しています。カフェは、既に各地でがん教育に携わる方々にご参加いただき、参加者と共に話し合う場で、がん教育の重要性が問われる中、外部講師を育てサポートすることを目的としています。
2024年11月開催のがん教育カフェは次の通りでした。
〇2024年11月2日(土) 16時~17時(WEB開催)
講師: 小口浩美さん(LINKOS共同代表/がんサポートおむすび代表)
講座: 「学校で伝える私のがんの話」
10月も夏日になる日があったため半袖服や扇風機をしまうことができませんでしたが、秋を楽しむ余裕もなく、今度は寒く乾燥の季節となりそうですね。日本が誇るプロ野球の大谷選手が所属するドジャースが優勝をはたし日本は歓喜にわきました。
11月度のがん教育カフェは、三連休の初日、日本は全国的に雨となり、九州地方には線状降水帯が発生する日でした。この日は、がん教育を推進する一般社団法人LINKOSのメンバーで共同代表でもある小口浩美さんが、がん教育外部講師として学校で話す内容について話してくれました。
2015年にがんを発症した小口さんは闘病を続け、現在はフリーランスのテレビディレクターとして忙しく働いています。告知をうけた時、がん治療にかかるお金や病気のことよりも、なにより自分という存在がこの世から消えてなくなることが辛いと感じたと語ります。いきなり「がん患者」となった現実をなかなか受け入れられずにいた時、故・日野原重明先生が全国の小学校で行っていた「命の授業」で語られていた言葉「命とは君たちが持っている時間」に心を動かされ、自分の“いのちの使い方”が定まり現在の活動へと繋がりました。
がんという病気について不慣れな学校の子どもたちに対しては、がんになったことは誰のせいでもない、治る人もいれば治らない人もいる、見守ってくれる人がいる……といったことを伝え、いのちについて一緒に考えるスタイルをとるように心がけている。そして、心と身体のサインに気を付けるように伝えているとのことでした。
全国からオンライン参加した人は33名の中からは、がんになっても“生き方次第”。どれほどいのちを輝かせることができるかが大事/医療の世界では不確実なことがたくさんあることを、子どもたちに理解して欲しい、といった意見がありました。
今年も残すところわずかとなりました。自分が持っている時間は有意義に使いたいですね!
※ 次回は、12月21(土)16時~17時開催です。
vol.5【がん医療・健康意識の向上は、若い世代の啓発が重要】
一般社団法人がん哲学外来(通称「がん哲学外来」)は、がん教育の学びを哲学で考える「哲学で考えるがん教育カフェ」を毎月開催しています。カフェは、既に各地でがん教育に携わる方々にご参加いただき、参加者と共に話し合う場で、がん教育の重要性が問われる中、外部講師を育てサポートすることを目的としています。
2024年10月開催のがん教育カフェは次の通りでした。
〇2024年10月12日(土) 16時~17時(WEB開催)
講師: 小泉知展先生(長野県立病院機構長野県立木曽病院
信州大学医学部附属病院信州がんセンター/信州大学名誉教授)
講座: 「長野県におけるがん教育の歩み」
ようやく秋本番となり、食欲・スポーツ・読書に専念できる過ごしやすい季節となりました。酷暑のせいで旅行気分ではなかった方も、電車に揺られ駅弁をたべながら季節の移ろいを堪能できる旅にでたい気分になるのではないでしょうか。
10月度のがん教育カフェは、世の中的に三連休の初日、長野県でがん教育の普及につとめる医師で信州大学名誉教授の小泉知展さんが、長野県のがん教育の歩みや現状についてお話しくださいました。小泉さんは、がん教育を推進する一般社団法人LINKOSのメンバーでもあります。
「がん教育」は、学校や図書館などで若い世代への教育を目的としているだけに、難解な内容ではなく、映画や本などを使用してわかりやすくかつ楽しく伝えることが大事と思い実施しているとのこと。
長野県といえば、上田市出身の山極勝三郎先生がおられます。山極先生は、世界初の「人工がん」実験に成功した人で、2016年には「うさぎ追いし 山極勝三郎物語」という映画も製作されました。現在、次々に今年のノーベル賞が発表されていますが、山極先生の功績もノーベル賞にとても近い位置にありましたが、諸事情で残念なことに受賞を逃してしまいました。それでも、先生の偉業は現在のがん医療を支え、語り継がれているのですから、まさに偉業ですよね。
長野県は女性のがんが多いものの全国的にがん罹患率が低い県となっている現実をみると、地道ながん教育による啓発が影響していることは間違いないでしょう。小泉さんは、「がん医療・健康意識の向上は、若い世代の啓発が重要で、いかに広げていくかが鍵」と語ります。
同じ頃、日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)が今年のノーベル平和賞を受賞しました。1956年に結成され始まった日本被団協は、被爆の記憶を語り続けて68年になります。受賞の喜びをかみしめる高校生たちの姿が印象的でした……がん教育もこつこつと続けることが重要なのだと改めて思いました。
※ 次回は、11月2(土)16時~17時開催です。
Vol.4 【日常に潜むアンコンシャスバイアスを壊すことが役目】
一般社団法人がん哲学外来(通称「がん哲学外来」)は、がん教育の学びを哲学で考える「哲学で考えるがん教育カフェ」を毎月開催しています。カフェは、既に各地でがん教育に携わる方々にご参加いただき、参加者と共に話し合う場で、がん教育の重要性が問われる中、外部講師を育てサポートすることを目的としています。
2024年9月開催のがん教育カフェは次の通りでした。
〇2024年9月14日(土) 16時~17時(WEB開催)
講師: 久田邦博さん(しあわせです感謝グループ代表他)
講座: 「私が考えるがんサバイバー発信」
季節のせめぎあいの中、9月9日の週はずっと自民党総裁選、立憲民主党代表選に立候補した方々の自己アピール週間でしたね。短い時間で自分の主張を、明確かつ聞く者の心を動かす話ができた方が選ばれることでしょう。
9月度のがん教育カフェは、がん教育外部講師として人前で話す機会が多い参加者のために、「しあわせです感謝グループ」代表/薬剤師/研修プランナー/無料オンラインがんサポ喫茶「止まり木」店主など多くの肩書をもつ久田邦博さんが、発信のコツを教えてくれました。
久田さんががん患者となったのは2001年38歳の時、妻と4人の息子の父親で、製薬会社に勤務していました。働きざかりで、公私ともに責任の重い立場にいた時のことです。がんと告知された患者が辿るプロセスは、枯れる時期→根を張る時期→新芽が出る時期、とご自身が語るとおり告知された当時はかなり落ち込んだそうです。
しかし、家長として養うべく家族がいる……思いを新たにし、所属していた会社で研修部門に異動し、持ち前の発想力とガッツでがん治療と平行して仕事をし、がんサバイバーとしてできる活動を続けました。
気が付くと発病から23年の月日が経ち、現在は60歳をこえる年齢となりました。自身の活動を通して思うのは、辛い治療の時期があるものの、がん患者という理由だけで特別扱いをしないで欲しいという思い……自分と周囲のアンコンシャスバイアス(無意識の偏見・思い込み)を壊すことががんサバイバーの自分ができることと語ります。
人前で話す機会が多いだけに、実に流暢な語りで簡潔にまとまった中身の濃い内容でした。話し方のコツとしては、感情に支配されないように気を付け、話す内容や量などを事前に準備し、基本2回はリハーサルをしてからのぞんでいるそうです。
がんに罹患しても人生が変わることはないし、そうなってはいけない、ということを示してくれる有意義な時間でした。
※ 次回は、10月19日(土)16時~17時開催です。