一般社団法人がん哲学外来

コラム:哲学で考えるがん教育カフェ

文責・桑島まさき/監修・宮原富士子

Vol.14 【グリーフはいつの世もおなじ】

一般社団法人がん哲学外来(通称「がん哲学外来」)は、がん教育の学びを哲学で考える「がん哲学の視点からのがん教育」(「哲学で考えるがん教育カフェ」改称)を毎月開催しています。カフェは既に各地でがん教育に携わる方々にご参加いただき、参加者と共に話し合う場で、がん教育の重要性が問われる中、外部講師を育てサポートすることを目的としています。

2025年7月開催のがん教育カフェは次の通りでした。

〇2025年7月5日(土) 16時~17時(WEB開催)

講師: 中村純子さん(がん哲学外来長野門前カフェロータス主宰
(風の谷がん哲学外来カフェ Inいちかわ)

講座: 「グリーフケアについて考える」

7月最初の土曜日、東京に限らず日本全国どこへいっても暑く、猛暑は約4ヶ月続くという予想がだされ、くじけそうになった方々は多いのではないでしょうか。さらに、日本列島が真っ赤に染まっているところへ、列島南端のトカラ列島ではずっと地震が続いていることから、地震大国で暮らしているだけに住民の方々だけでなく誰もが不安を覚えたことでしょう。
そんな中の7月最初の土曜日、7月度のがん教育カフェが開催されました。この日の講演者は長野県内でがん教育カフェを主宰する中村純子さんでした。ご家族の死を機会に傾聴ボランティア活動をはじめ、臨床スピリチュアルケア師でもある中村さんは、「グリーフケア」について研究を重ねました。この日はご自身の経験もふくめて「グリーフケアについて」というテーマで話していただきました。

がん治療の医療技術は日進月歩の勢いで進化し延命率も伸びていますが、がんは依然として日本人の死亡原因の首位となっています。そのため「がんと死」はセットのように考えられる傾向があるようです。そして、大切な人を失った方々は「グリーフ」に直面し精神面のケア(グリーフケア)を必要とします。しかしながら、グリーフはがんが日常の中にはいっていない状態でも日常的に存在します。がん以外の病気や事故や事件などで大事な人が亡くなったり、自身が望まないことがおきたり、ドラマや映画の世界でも同じです。また、子どもの頃にうけたトラウマも該当します。つまり、グリーフは人が生きていく過程のあらゆる場面で直面するもので、その本質は古今東西かわらないものです。

普遍的なものですが、グリーフを抱えた人をケアすることは容易ではありません。グリーフケアはどうあるべきなのか、中村さんはわかりやすく説明されました。傷ついた人に対して有害支援にならないように、「寄り添い、つなぐ(聴いてくれる人になる)」という基本を守りたいものです。

Vol.13 【人生と向き合うチャンスはおもいがけず与えられる】

一般社団法人がん哲学外来(通称「がん哲学外来」)は、がん教育の学びを哲学で考える「がん哲学の視点からのがん教育」(「哲学で考えるがん教育カフェ」改称)を毎月開催しています。カフェは既に各地でがん教育に携わる方々にご参加いただき、参加者と共に話し合う場で、がん教育の重要性が問われる中、外部講師を育てサポートすることを目的としています。      

2025年6月開催のがん教育カフェは次の通りでした。

〇2025年6月7日(土) 16時~17時(WEB開催)

 講師: 森川みかさん(薬局薬剤師、がん教育外部講師、学校薬剤師)
             
 講座: 「健康サポート薬局として ~地域で実施しているがん哲学カフェ~」

関東地方は梅雨入りしそうでしない6月最初の土曜日は夏日の一日で、6月度のがん教育カフェが開催されました。この日の講演者は広島県内で薬局薬剤師として働きながら、「がん哲学カフェいつくしま」を主宰する森川みかさんで、薬局で行うがん哲カフェについて話していただきました。

森川さんのカフェには、たくさんの方々が集い、遠方から来られる方もいらっしゃるようです。健康サポート薬局の使命として先にはじめたのは「幸年期カフェ」で、参加者がホッとできる時間を過ごせる工夫を続けています。次に始めたのが、「がん哲カフェ」……実は、森川さんは数年前に家族をがんで失いご自身もがんサバイバーです。思いがけず日常にはいってきた不運(がん)に対し、人生は幸福な時間だけではないということを改めて意識し、人生とじっくり向き合う時間をもちました。

カフェでは、「がん哲学外来」のHPでも紹介している「言葉の処方箋」を扱い、がんという病気に関わる方々と共に考える時間を持ちます。また、アロマリップ作りをしたり薬膳料理を作ったり、無心になる時間を過ごすための工夫もしているとのことです。

6月にはいってすぐに、偉大なる野球選手で監督だった“ミスタープロ野球”こと長島茂雄さんの訃報がはいり、あらゆる媒体のメインニュースとなりました。現役時代のミスターをしらない世代でも、流れてくるニュースをみることで、この“昭和のスター”がいかに日本国民に愛され記憶に残る偉大な人であったか理解できた(る)ことでしょう。
どんなに偉業を成し遂げた方にも等しく死の時が訪れます。その日がくるまで、現在という時間をしっかり生きたいものです。

※ 次回は、2025年7月5日(土)16時~17時開催です。

Vol.12 【医療の現場における、対話の大切さ・難しさ】

一般社団法人がん哲学外来(通称「がん哲学外来」)は、がん教育の学びを哲学で考える「がん哲学の視点からのがん教育」(「哲学で考えるがん教育カフェ」改称)を毎月開催しています。カフェは既に各地でがん教育に携わる方々にご参加いただき、参加者と共に話し合う場で、がん教育の重要性が問われる中、外部講師を育てサポートすることを目的としています。      

2025年5月開催のがん教育カフェは次の通りでした。

〇2025年5月10日(土) 16時~17時(WEB開催)

 講師: 北郷秀樹さん(がん治療相談専門家)
             
 講座: 「意思決定とは ―対話によって適切な治療選択が生まれる―」

GWが終わり、ほとんどの方が非日常から日常へと戻られたことと思います。
関東地方は花粉症の心配はほぼなくなりましたが、ピークを過ぎたと思われた黄砂の飛来があり5月一杯注意が必要だと発表されました。カフェが開催された5/10は<春の嵐>が予想されましたが、幸いにも首都圏はたいしたことはなかったものの、近年の異常気象を思うと不安を覚えた方は少なくないでしょう。
そして5月は紫外線がたいへん強い時期です。既にあちこちで夏日が記録されておりますため、夏本番の猛暑に備えて暑熱順化対策も必要です。

連休明けの(5/10)に開催された5月度のがん教育カフェ、この日の講演者はがん治療相談家として40年近く活動を続ける北郷秀樹(ほんごう ひでき)さんで、がん治療における医療者と患者の対話の重要性について話されました。
がん教育カフェ(オンライン)に集うメンバーは、医師、薬剤師、看護師などの医療者がほとんどで、その他としてがん当事者やその家族です。今回お話しいただく北郷さんは、医師でも薬剤師でもがん当事者でもありませんが、がん治療に長く関与する<がんのエキスパートアドバイザー>です。

長い闘病を強いられるがんのような病気に罹患すると、言うまでもなく医療従事者(特に主治医)との良好な信頼関係が治療経過に大きく左右しますので、主治医と患者双方の円滑な対話による治療が求められます。この問題がうまくいかないと、ストレスフルな闘病となります。
本講演では、共同意思決定の環境づくりとして、「語る力」と「聞く力」の重要性について説明されました。治療を受ける側、施す側、どちらにとっても大事な問題だけに、具体的にお話しいただく機会を持つべく、あと数回ご登場いただく予定です。

※ 次回は、2025年6月7日(土)16時~17時開催です。

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