一般社団法人がん哲学外来

コラム:哲学で考えるがん教育カフェ

文責・桑島まさき/監修・宮原富士子

Vol.4 【日常に潜むアンコンシャスバイアスを壊すことが役目】

一般社団法人がん哲学外来(通称「がん哲学外来」)は、がん教育の学びを哲学で考える「哲学で考えるがん教育カフェ」を毎月開催しています。カフェは、既に各地でがん教育に携わる方々にご参加いただき、参加者と共に話し合う場で、がん教育の重要性が問われる中、外部講師を育てサポートすることを目的としています。      

2024年9月開催のがん教育カフェは次の通りでした。

〇2024年9月14日(土) 16時~17時(WEB開催)

 講師: 久田邦博さん(しあわせです感謝グループ代表他)
             
 講座: 「私が考えるがんサバイバー発信」

 季節のせめぎあいの中、9月9日の週はずっと自民党総裁選、立憲民主党代表選に立候補した方々の自己アピール週間でしたね。短い時間で自分の主張を、明確かつ聞く者の心を動かす話ができた方が選ばれることでしょう。
 9月度のがん教育カフェは、がん教育外部講師として人前で話す機会が多い参加者のために、「しあわせです感謝グループ」代表/薬剤師/研修プランナー/無料オンラインがんサポ喫茶「止まり木」店主など多くの肩書をもつ久田邦博さんが、発信のコツを教えてくれました。

久田さんががん患者となったのは2001年38歳の時、妻と4人の息子の父親で、製薬会社に勤務していました。働きざかりで、公私ともに責任の重い立場にいた時のことです。がんと告知された患者が辿るプロセスは、枯れる時期→根を張る時期→新芽が出る時期、とご自身が語るとおり告知された当時はかなり落ち込んだそうです。
しかし、家長として養うべく家族がいる……思いを新たにし、所属していた会社で研修部門に異動し、持ち前の発想力とガッツでがん治療と平行して仕事をし、がんサバイバーとしてできる活動を続けました。

気が付くと発病から23年の月日が経ち、現在は60歳をこえる年齢となりました。自身の活動を通して思うのは、辛い治療の時期があるものの、がん患者という理由だけで特別扱いをしないで欲しいという思い……自分と周囲のアンコンシャスバイアス(無意識の偏見・思い込み)を壊すことががんサバイバーの自分ができることと語ります。
人前で話す機会が多いだけに、実に流暢な語りで簡潔にまとまった中身の濃い内容でした。話し方のコツとしては、感情に支配されないように気を付け、話す内容や量などを事前に準備し、基本2回はリハーサルをしてからのぞんでいるそうです。
がんに罹患しても人生が変わることはないし、そうなってはいけない、ということを示してくれる有意義な時間でした。

※ 次回は、10月19日(土)16時~17時開催です。

Vol.3【がんと診断されても動揺しない世の中の実現】

一般社団法人がん哲学外来(通称「がん哲学外来」)は、がん教育の学びを哲学で考える「哲学で考えるがん教育カフェ」を毎月開催しています。カフェは、既に各地でがん教育に携わる方々にご参加いただき、参加者と共に話し合う場で、がん教育の重要性が問われる中、外部講師を育てサポートすることを目的としています。      

2024年8月開催のがん教育カフェは次の通りでした。

〇2024年8月10日(土) 16時~17時(WEB開催)

 講師: 進藤丈さん(大垣在宅クリニック医師)
             
 講座: 「がん教育の授業で大切にしたいこと、気をつけること」

 岐阜県大垣市で在宅クリニック医師として働く進藤さんは、がん教育外部講師として子どもたちにがん教育活動を展開されています。この日は、がん教育の授業で気をつけていること、大切にしていることなどについて話されました。活動拠点である岐阜県のがん教育モデル、西濃地域における取り組み、がん教育外部講師派遣システムなど、限られた時間内での幅広い情報は参考になることばかりでした。
進藤さんが学校で子どもたちにがん教育をする際には、とにかく常に子どもを中心にわかりやすく話をすること、医療者・学校の先生・がん患者さんそれぞれの得意分野を共有すること、を心がけているということでした。
そして、治療が苦しく生きていくのが辛いなら勇気をもって「助けて!」と声をあげて欲しい、がんと診断されても動揺せず生きて欲しい。そういう世の中にしたいという思いを抱いて活動している、と声に力をこめて話されました。

この日の2日前、宮崎県日向灘を震源とする地震がおこり、南海トラフ大地震想定域のため注意報がだされ日本列島に緊張がはしりました。頻繁に地震がおこっているとはいえ不安を覚えたことと思います。そんな中、全国津々浦々から参加者が集い想いを共有しました。
年々異常さを増す酷暑、地震、大雨、台風……耐え難く苦しい夏ですが、地震大国に住む以上、早いうちから正しい知識を学び、地震がおきても動じず身を守る行動を身につけることが必要です。
2人に1人ががんに罹患する現在、とても身近な病気になったとはいえ、いざ罹患すると「まさか自分が!」「何故、自分が!?」と思う方は少なくないようです。早いうちからがんについて学んでいたらどうでしょうか……? 
がん告知を受けても動揺しないような啓発を充実させる社会の構築をめざす活動に期待しています。

※ 次回は、9月14日(土)16時~17時開催です。

Vol.2【現在できることを、遠慮なく欲張って生きる!】

 一般社団法人がん哲学外来(通称「がん哲学外来」)は、がん教育の学びを哲学で考える「哲学で考えるがん教育カフェ」を毎月開催しています。カフェは、既に各地でがん教育に携わる方々にご参加いただき、参加者と共に話し合う場で、がん教育の重要性が問われる中、外部講師を育てサポートすることを目的としています。      

2024年7月開催のがん教育カフェは次の通りでした。

〇2024年7月20日(土) 16時~17時(WEB開催)

 講師: 大島直也さん(大島治療院鍼灸師/スポーツトレーナー/肺がん当事者)
             
 講座: 「学校で伝える私のがんの話」

講演内容: 
 AYA世代のがん患者で三児の父でもある大島さんは、現在、幸いにもさほど抗がん剤の副作用がないため通常通り仕事をしながら、がん教育外部講師として活動中。がん教育外部講師としての活動で気を付けていること、そして自身の闘病について話してくれました。
学校で子どもたちにがん教育をする際には、医学的根拠が乏しい情報は明白にして話す/子どもたちの表情をみて話す/自分よがりの独演会にしない/といった点に気を付けているそうです。
がん治療に関しては、治療がうまくいかないと焦りが生じるものだが「最新の治療」が「最良の治療」ではないことを理解して欲しいと思っているとのこと。

 がんと診断されてから「みんなのがん教室」に参加し、同じような経験をもつ仲間たちと知り合い、がん教育を推進する一般社団法人LINKOS(リンコス)に関わり、現在は同法人の理事を務めている大島さんは、がん教育を通してキャリア教育をしたいと考えていると話します。
昨年夏、ステージⅣの肺がん患者」となり1年が経過。厳しい治療になるだけに、現在できることは遠慮なくやり、生きること、楽しむこと、やりたいことを欲張ってやりたいと話す姿をみて、「いい覚悟でいきる」という清々しい言葉を実感しました。

 
※ 次回は、8月10日(土)16時~17時開催です。

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