一般社団法人がん哲学外来

コラム:哲学で考えるがん教育カフェ

文責・桑島まさき/監修・宮原富士子

Vol.8 【がんという病気で考える社会】

一般社団法人がん哲学外来(通称「がん哲学外来」)は、がん教育の学びを哲学で考える「哲学で考えるがん教育カフェ」を毎月開催しています。カフェは、既に各地でがん教育に携わる方々にご参加いただき、参加者と共に話し合う場で、がん教育の重要性が問われる中、外部講師を育てサポートすることを目的としています。      

2025年1月開催のがん教育カフェは次の通りでした。

〇2025年1月18日(土) 16時~17時(WEB開催)

 講師: 松岡宏さん(藤田医科大学医学部教授)
             
 講座: 「わかりやすいがんの知識」

 
 多くの方々が年明け(1/6)から仕事始めとなり、正月モードから日常へとスイッチを切り替えられたことと思います。昨年のお正月に「令和6年能登半島地震」が発生し甚大な被害がでた記憶が新しいこともあり、(1/13)夜、宮崎県で震度5弱の地震が発生し、すぐに「南海トラフ地震臨時情報」が」発表された時は緊張感をもった時間を過ごされたことでしょう。地震大国に住んでいる以上、引き続き、日ごろからの警戒と備えが必要なのは言うまでもありません。

 2025年最初のがん教育カフェは(1/18)に開催され、全国から30名近い方々がオンラインで集いました。この日の講演者は、藤田医科大学医学部教授でがん教育外部講師としても活動する松岡宏先生。医療者の立場から、がんとは?/手に入れられる情報とは?/標準治療とは?/ACP(アドバンス・ケア・プランニング)とSDM(シェアード・デシジョン・メーキング)等についてわかりやすく話されました。

 ところで、解剖学者の養老孟司さんは昨年5月、がんに罹患したことがわかり現在は抗がん剤の治療中です。病院嫌いの養老先生が抗がん剤治療を選択したことが広く取り上げられているようです。がんは2人に1人がかかる病気ですから、著名人だから罹患しないということはありません。がん患者当事者である著名な方々が発信される闘病の記録は参考になり、同じような境遇にいる方々の支えとなることでしょう。
病気になると標準治療をしていても不安になり、溢れる情報に惑わされて心を乱されたりすることもあります。それだけに、直にがん治療に携わる医療従事者からお話をきくと安心感を覚えるものです。

 日本人の死亡原因の首位をしめる病気だけに、当事者だけでなく社会全体ががんについての正しい知識をきちんと理解することが求められます。残念ながら松岡先生の話は1時間という短い時間内では語りつくせない内容でしたので、続きを別の機会に設けることとなりました。
 

※ 次回は、2025年2月15(土)16時~17時開催です。

Vol.7 【戻るべき場所があると強くなれる】

一般社団法人がん哲学外来(通称「がん哲学外来」)は、がん教育の学びを哲学で考える「哲学で考えるがん教育カフェ」を毎月開催しています。カフェは、既に各地でがん教育に携わる方々にご参加いただき、参加者と共に話し合う場で、がん教育の重要性が問われる中、外部講師を育てサポートすることを目的としています。      

2024年12月開催のがん教育カフェは次の通りでした。

〇2024年12月21日(土) 16時~17時(WEB開催)

 講師: 柴田景子さん(がん当事者/ガンピアサポーター)
             
 講座: 「学校で伝える私のがんの話」

 
 2024年最後のがん教育カフェは、今年も残すところ僅かとなった寒さ厳しい12/21に開催され、誰もが忙しい時期でしたが全国から30名をこえる方々がオンラインで集いました。この日は、三重県桑名市在住、がん患者でがん教育外部講師としても活動する柴田景子さんが、自身のがん体験を通して思考を重ねたどり着いた生き方を中心に話しました。
 
 柴田さんががんに罹患したのは、配偶者は海外赴任中、三重県で3人の子どもの世話に明け暮れていた時……告知をうけた方が経験するように柴田さんも「がん」という響きに負けそうになり気持ちが沈んでしまいました。そんなある日、マンガばかりよんでいた息子さんから「スラムダンク」を例にとり「諦めたら試合終了!」と力強い励ましの言葉をもらい、時を同じくして職場の上司からも温かく優しい言葉をもらい、がんと向きあう決心をされたそうです。
 ……身体の中にがん細胞がいても、自分の戻るべき場所ある。そう思うだけで人は強くなれる……という思いが強くなっていきました。

 もちろん、何気なく心ない言葉をかける人もいて傷ついたこともある。その時々で思考を重ね、気持ちの棚卸しをすることで、広い視野をもつことができたそうです。
 そして、自身の人生におこったことをなかった事にするべきではないと考え、同じような境遇にいる方々に役に立てればと闘病の日々をブログで発信するようになり、さらにがん教育外部講師の活動に参加し、現在に至っています。

 柴田さんの自分史上、がん罹患・闘病体験は大事件だったはずですが、がんとの関わりだけが人生の全てではありません。病気や社会と闘い、傷つきながらも考えぬいて、立ち止まらずに前へ進んでゆく強さ、しなやかさ。自分の人生をリメイクしながら生き直していく姿勢、ストレートな思いが伝わるお話でした。 
 来年も引き続きよろしくお付き合いください。良いお年をお迎えくださいませ。

※ 次回は、2025年1月18(土)16時~17時開催です。

Vol.6 【私のいのちの使い方】

一般社団法人がん哲学外来(通称「がん哲学外来」)は、がん教育の学びを哲学で考える「哲学で考えるがん教育カフェ」を毎月開催しています。カフェは、既に各地でがん教育に携わる方々にご参加いただき、参加者と共に話し合う場で、がん教育の重要性が問われる中、外部講師を育てサポートすることを目的としています。      

2024年11月開催のがん教育カフェは次の通りでした。

〇2024年11月2日(土) 16時~17時(WEB開催)

 講師: 小口浩美さん(LINKOS共同代表/がんサポートおむすび代表)
             
 講座: 「学校で伝える私のがんの話」

 10月も夏日になる日があったため半袖服や扇風機をしまうことができませんでしたが、秋を楽しむ余裕もなく、今度は寒く乾燥の季節となりそうですね。日本が誇るプロ野球の大谷選手が所属するドジャースが優勝をはたし日本は歓喜にわきました。
 11月度のがん教育カフェは、三連休の初日、日本は全国的に雨となり、九州地方には線状降水帯が発生する日でした。この日は、がん教育を推進する一般社団法人LINKOSのメンバーで共同代表でもある小口浩美さんが、がん教育外部講師として学校で話す内容について話してくれました。
 
 2015年にがんを発症した小口さんは闘病を続け、現在はフリーランスのテレビディレクターとして忙しく働いています。告知をうけた時、がん治療にかかるお金や病気のことよりも、なにより自分という存在がこの世から消えてなくなることが辛いと感じたと語ります。いきなり「がん患者」となった現実をなかなか受け入れられずにいた時、故・日野原重明先生が全国の小学校で行っていた「命の授業」で語られていた言葉「命とは君たちが持っている時間」に心を動かされ、自分の“いのちの使い方”が定まり現在の活動へと繋がりました。

 がんという病気について不慣れな学校の子どもたちに対しては、がんになったことは誰のせいでもない、治る人もいれば治らない人もいる、見守ってくれる人がいる……といったことを伝え、いのちについて一緒に考えるスタイルをとるように心がけている。そして、心と身体のサインに気を付けるように伝えているとのことでした。
 全国からオンライン参加した人は33名の中からは、がんになっても“生き方次第”。どれほどいのちを輝かせることができるかが大事/医療の世界では不確実なことがたくさんあることを、子どもたちに理解して欲しい、といった意見がありました。
 
 今年も残すところわずかとなりました。自分が持っている時間は有意義に使いたいですね!

※ 次回は、12月21(土)16時~17時開催です。

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