一般社団法人がん哲学外来

コラム:哲学で考えるがん教育カフェ

文責・桑島まさき/監修・宮原富士子

Vol.9 【多様性を包摂する社会の実現をめざして】

一般社団法人がん哲学外来(通称「がん哲学外来」)は、がん教育の学びを哲学で考える「哲学で考えるがん教育カフェ」を毎月開催しています。カフェは既に各地でがん教育に携わる方々にご参加いただき、参加者と共に話し合う場で、がん教育の重要性が問われる中、外部講師を育てサポートすることを目的としています。      

2025年2月開催のがん教育カフェは次の通りでした。

〇2025年2月15日(土) 16時~17時(WEB開催)

 講師: 服部文さん(仕事と治療の両立支援ネットーブリッジ代表理事)
             
 講座: 「社会と折り合い納得して生きるための両立支援」

 冬の寒さに耐え忍ぶ日々を過ごしていたら、いつしか2月も半分が過ぎ陽気な日も訪れるようになり、春の足音が聞こえてくるようになりました。温かくなるのは嬉しいですが、花粉症に苦しむ方々は憂鬱に感じられることでしょう。
2025年2月度のがん教育カフェは(2/15)に開催され、全国各地から30名近い方々がオンラインで集いました。この日の講演者は、名古屋を拠点に活動する仕事と治療の両立支援ネットーブリッジで代表理事を務める服部文さんでした。ちなみにブリッジは、医療と労働の連携に加え、地域リソースの繋がりで両立支援を目的に活動する団体です。
https://bridge-nagoya.jp/about-us/

 かつてがんを罹患したら人生が終るように思われていましたが、治療技術が日進月歩の勢いで高度化したことにより、がん患者に希望をもたらしてくれました。治療中だからといって入院したり自宅で療養したりすることもなく、働き方を調整して治療と仕事を両立することも珍しくなくなりました。……そんな折に浮上した高額医療費自己負担額引き上げ問題は、がんや重篤な病気を患い治療を続けている方々にとって死活問題となっていることでしょう。
 
 がん治療を続けながら働く方の実例をあげ、どのように支援を行ったかを具体的に示した内容は、がん闘病中の方々が多いだけに大変参考になりました。(まとめると次の通りでした。)
〇人は生存するだけでなく、社会に生きる実感や手ごたえを求める存在。
〇自分自身を最大限に活かすことに対する覚悟と勇気が必要(どう働けるのかをしっかり言語化することが必要)。
〇多様性を包摂する社会の実施。

 繰り返しになりますが、医療技術の目まぐるしい進歩のおかげで幸いにもがんになっても治癒率が高くなり、長く生きることも可能になりました。変わらなければならないのは「がん」という病気への偏見なのかもしれません。
人生百年時代、病気と無縁の方はおそらく皆無です。両立支援は、双方向のコミュニケーションが重要なのは言うまでもありません。そして、「多様性を包摂する社会」のためには、子どもだけではなく大人へのがん教育が必要だという思いを改めて持ちました。

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