一般社団法人がん哲学外来

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21世紀のがん哲学 樋野興夫
(順天堂大学名誉教授、新渡戸稲造記念センター長、一般社団法人『がん哲学外来』名誉理事長)

〜すこしの時間ご一緒しませんか?
ちょっと立ちどまり、一息つき、考えるときを持ち、歴史人に思いをはせる~

第3回 『21世紀の懸け橋 〜“がん哲学”〜』

『がん哲学外来』〜 『賢明な配慮の習得』 〜

『がん哲学外来』とは、【『丁寧な観察力の修練 =『個性と多様性』&『賢明な配慮』の習得の場】であろう! 新渡戸稲造(1862-1933)が愛読したカーライル(Thomas Carlyle 1795-1881)の『汝の義務を尽くせ。汝の最も近くにある義務を尽くせ、汝が義務と知られるものを尽くせ』が、まさに『がん哲学外来の原点』であろう!

2008年開始された『がん哲学外来』は,草創期(ホップ)・発展期(ステップ)を経て、いよいよ、飛躍期(ジャンプ)の時代に入ったと感じる今日この頃である。【人知を超えて、時が進んでいる】を痛感する日々でもある。
『病気も単なる個性である』の『社会の構築』が、人類の進むべき方向であろう! 【相並んで、進むべき方向を組み立て志を広め、実践する拠点】 これこそ、【『がん哲学外来』の役割と使命』】ではなかろうか!

第2回 『21世紀の懸け橋 〜 “がん哲学” 〜』

私の故郷は、人口約37名(空き家60%)の島根県出雲市大社町鵜峠(うど)である。 隣の鷺浦(さぎうら)と合わせて、『鵜鷺(うさぎ)』(小学校 & 中学校は廃校)と呼ばれている。 713年に編纂が命じられたという『出雲国風土記』にも登場する歴史ある地でもある。

想えば、2013年『新渡戸稲造(1862-1933)没80周年記念』として、新渡戸稲造が国際連盟事務次長を務めたジュネーブでの国際会議の後、バンクーバーを訪れる機会が与えられた。 バンクーバーにある1908年創立された The University of British Columbia(UBC)の広大なキャンパス内にある新渡戸記念庭園(Nitobe Memorial Garden)に訪れた。1933年ビクトリアで客死した新渡戸稲造を記念したものである。『International Pacifist(国際的な平和主義者)=新渡戸稲造』を静思する時となった。

翌日は、バンクーバーから約1時間30分フェリーに乗り、ビクトリアを訪れた。新渡戸稲造が亡くなったRoyal Jubilee病院を訪問した。『歴史の重みと、継続的な成長の秘訣』は、『深い専門性』と『高い常識性』の『懸け橋』で『21世紀の懸け橋 〜 “がん哲学” 〜』の原点ではなかろうか!【『哲学は 哲学する人そのひとの 人格の表現であるーー、『人がいかなる哲学を選ぶかは、彼がいかなる人間であるかに依存する。』】の再確認の日々である。

【『人間は、ロビンソン・クルーソーの様に孤島にひとり住んでいたのでは、良い人か 悪い人かは判らない、人間社会の中に住まわせてみて 初めてその性(サガ)が明らかになる。がん細胞もしかり。』 & 『がん細胞は増殖して仲間が増えると、周囲の正常細胞からのコントロールを脱し、悪性細胞としての行動をとるようになる。 君達学生諸君も似たところがある。 一人ひとり話をすると、常識もあり善良な青年にみえるのだが、学生自治会として集団行動をとると、変なことを云ったりしたりする。』】の吉田富三(1903-1973)の言葉を、私は若き日から学んだものである。
『役割意識 & 使命感の自覚』と『練られた品性と綽々たる余裕』は『21世紀の懸け橋 〜 “がん哲学” 〜』の真髄である。

第1回 『21世紀の懸け橋 〜 “がん哲学” 〜』

2024年5月6日、2008年 NPO法人『がん哲学外来』設立で お世話になった吉川研一氏、風早謙一郎氏と一般社団法人『がん哲学外来』の事務局の宮原富士子氏、社員の土屋千雅子氏と5人で、東久留米ジョナサンで対談の時を持った。 大変有意義な時であった。そして、ブログ『21世紀の懸け橋 〜 “がん哲学” 〜』の発行が決定された。 大いに感服した。

『がん哲学=生物学の法則+人間学の法則』である。筆者が初めて『がん哲学』を提唱したのは2001年である。その2年後の2003年、日本病理学会で吉田富三(1903-1973)の生誕100周年記念事業が行われた際、初めて『がん哲学』という言葉を世の中に公表した。

2005年にアスベスト(石綿)による中皮腫や肺がんなどの健康被害が社会問題になったとき、順天堂大学医学部教授時代で 中皮腫の早期診断法を開発していた。 そこで 順天堂大学附属病院で『アスベスト・中皮腫外来』を開設し、問診を担当した。そして、がんと共に生きるこれからの時代において、その不安や心の痛みを受け止め、”すき間”を埋めるための対話が必要だと、病院に提案して『がん哲学外来』を2008年に開設した。 各新聞社で大きく取り上げられ、全国各地から予約が殺到した。 キャンセル待ちも出るほどで、”対話の場”の必要性を確信した。

新渡戸稲造(1862-1933)の言葉に『人生に逆境も順境もない』とある。 自分のことばかり考えると、悩みや苦しみが立ちはだかって逆境になる。でも、自分よりも困った人に手を差し伸べようとすれば、自らの役割が生まれ、逆境はむしろ順境になる。

『がん哲学外来』には、多くの患者さんが来られた。 困っている人のために居場所を作る。 それが人間としての使命であろう! 【『病気』であっても『病人』ではない社会】は、人類の進む方向である。

『がん哲学外来』の5ヶ条

1)『他人の感情を尊敬することから生じる謙遜・慇懃の心』
2)『濃やかな配慮の人』
3)『欣然たる面貌、快然たる微笑』
4)『正論より配慮の訓練』
5)『個性と多様性の提示』

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