一般社団法人がん哲学外来

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21世紀のがん哲学 樋野興夫
〜すこしの時間ご一緒しませんか?
ちょっと立ちどまり、一息つき、考えるときを持ち、歴史人に思いをはせる~

第33回 『純度の高い専門性と社会的包容力』 〜 賢明なリーダー & イニシアチブ 〜

2024年11月26日は、【福島県立医科大学附属病院 臨床腫瘍センター がん相談支援センター】での、『吉田富三(1903–1973)記念 福島がん哲学外来』に赴く。 順天堂大学病院の外来で『がん哲学外来』が開設(2008年)された翌年(2009年)に福島県立医科大学で『吉田富三記念 福島がん哲学外来』がスタートされた。

【吉田富三は、福島県浅川町生まれの病理学者。『吉田肉腫』及び『腹水肝がん』の発見で世界的に知られ、文化勲章を受けた。 学者としてのみならず、がんという病気を通じて 社会の原理にまで言及する言葉を多く残す。

福島県出身の世界的病理学者 吉田富三博士を記念して、博士の孫弟子である樋野興夫先生が『福島がん哲学外来』を開設しました。 がんと共に生きる患者/ご家族の思いや悩みをともに考える“心の診察室”です。『がんと共に生きる意味やコツを 樋野先生が先人達の知恵を紐解き 一緒に考えます。』】とチラシには紹介されている。 ただただ感謝である。

筆者の癌研時代の恩師 菅野晴夫先生(1925-2016) は、吉田富三の愛弟子である。 菅野晴夫先生の下で、2003年『吉田富三生誕100周年記念事業』を行う機会が与えられた。 また菅野晴夫先生は、南原繁(1889-1974)が東大総長時代の医学部の学生であったので、『南原繁の風貌、人となり』を病理組織標本を顕微鏡で診断しながら教わった。 それが、【『吉田富三の生物学』と『南原繁の人間学』を合体】して 『がん哲学=生物学の法則+人間学の法則』に繋がった。【『勇気と決断の士』&『自分は 病理学者としては とてもフォーマルな病理学者とは言えない、 インフォーマルな病理学者であり、インフォーマルな人間である』&『優れた資質が 英才教育によって磨かれ、大形の花を咲かせたものと思われる』】が、『言葉の処方箋』になったものである。『吉田富三・菅野晴夫 = 賢明なリーダー & イニシアチブの人物』であり、筆者とって 癌研時代の菅野晴夫先生との邂逅は『貴重な生涯の贈り物』となった。

【電子計算機時代だ、宇宙時代だといってみても、人間の身体のできと、その心情の動きとは、『昔も今も変わってはいない』のである。 超近代的で合理的といわれる人でも、病気になって自分の死を考えさせられる時になると、太古の人間にかえる。 その医師に訴え、医師を見つめる目つきは、超近代的でも合理的でもなくなる。 静かで、淋しく、哀れな、昔ながらの一個の人間にかえるのである。 その時の救いは、頼りになる良医が側にてくれることである】(吉田富三の言葉)(添付)が『がん哲学外来』の原点でもある。

『がん哲学外来』は【『純度の高い専門性と社会的包容力 〜 病気であっても、病人ではない 〜』社会構築を目指す】ものである。 今年(2024年)は、『吉田富三記念 福島がん哲学外来』15周年である。 来年(2025年2月5日)、【『第10回臨床腫瘍セミナー』:『丁寧な大局観 〜 風貌を見て、心まで診る 〜』】が予定されている(添付)。

第32回 『人生哲学のエッセンス』 〜 勇気と希望を与える 〜

2024年11月23日は、『東中野キングス・ガーデン』で、講演会【デスカフェ 〜 死と生を語り合う場 〜 その可能性を考える】に赴く。

11月24日は、飯能市民活動センターでの【樋野興夫先生特別講演会『がんカフェの取り組み』&『懇親座談会』】である(添付)。【『言葉の処方箋』で心の痛みや悩みの解決へと導くために、今からできることを学びます。】と紹介されている。

『新渡戸稲造 壁を破る言葉』(三笠書房2023年発行)(添付)の【『はじめに『新渡戸稲造が残してくれた人生のヒント』】に下記を述べた。

【私は2008年に順天堂大学医学部附属順天堂医院で『がん哲学外来』を開設し、がんにまつわるさまざまな悩みの解消につとめてきました。 がん患者さんの声に耳を傾け、苦しみを和らげるのが目的です。 それ以後、この動きは全国に広がり、私自身は5000人以上の患者さんやそのご家族と面談してきました。

『がん哲学外来』をはじめたのは、私ががんの研究をする病理学者である以上に、新渡戸稲造(1862−1933)の言葉に深い共感を覚えたからです。 私が面談者に差し上げる『言葉の処方箋』は、新渡戸を筆頭に私が尊敬する人物から学んだ『人生哲学のエッセンス』であり、それが私の生きる基軸になっています。 だからこそ、その処方箋を、病気に悩み、苦しむ人にわけたいと願って、この活動を始めました。

私は以前、『われ21世紀の新渡戸にならん』という本を書きました。私が理事長をつとめる恵泉女学園の創始 河井道(1877-1953)は新渡戸の弟子のひとりで、彼女は『わたしのランターン』という著書の中で、『前向きで、前進的であること』を信条として掲げています。 私もそれにならって、『前向きで前進的でありたい』と願っています。 そして、新渡戸稲造が東洋と西洋をつなぐ『架け橋』になることを願ったように、医療とがん患者をつなぐ『架け橋』を築くことが私の使命だと、思いを新たにしています。

本書は、そんな思いのもと、私が感銘を受けた新渡戸稲造の言葉をひもといてみたものです。 いまの方にも読みやすいように、私なりの意訳と独自の解釈をしています。 とはいえ、本書は、がん患者さんのためだけのものではありません。 病気に限らず、人生には幾多の苦難がつきものです。 新渡戸稲造の言葉は、困難に直面して立ち止まっている人、逆境にはまって必死にもがいている人、そんな人たちに大きな勇気と希望を与えてくれます。 そこには人間が自分の人生を、自信を持って力強く生きていくための知恵がたくさん詰まっています。 そんな新渡戸稲造の言葉は、どんな人でも直面する悩みや悲しみを癒し、苦難や逆境を乗り越え、“よき人生”を過ごす糧を与えてくれるものです。

本書が、現代という困難な時代をよりよく、より有意義に、そしてよりたくましく生きていくヒントになれば、これに勝るよろこびはありません。】

 

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