第50回 清々しい胆力 〜 『自由にして勇気ある行動』 〜
2021年7月14日 順天堂大学保健医療学部 診療放射線学科『がん医療科学』の授業で『沈黙の春』と『新渡戸稲造(1862-1933)の国際連盟での功績』を質問されたのが 今回鮮明に思い出された。『沈黙の春(Silent Spring)』(1962年)は、『環境問題のバイブル』と言われるアメリカの海洋生物学者:レイチェル・カーソ(Rachel Carson 1907-1964)の本で日本語翻訳は、戦後初代東大総長であった南原繁(1889-1974)のご長男:南原実先生(東京大学教養学部 名誉教授)(1930-2013)によって出版されている(青樹簗一のペンネーム)(1974年発行:新潮社)。
筆者は、現在3代目代表を務める『南原繁研究会』(2004年)以来、南原実先生とは毎年、wifeと一緒にご自宅に招かれ夕食をしながら、親しい深い学びの時が与えられたものである。『未来に生きる君たちに』(南原実)の貴重な得難い『人生の特別ゼミナール』の対話学の実践の場であった。 最終章17章『べつの道』は、『私たちは、いまや分れ道にいる。』で始まる。 長野県にある青木湖(「青木湖学問所」)に、お住まいの南原実先生の娘さまの『南原実回想文集』に、筆者は『南原実先生との出会い』の寄稿させて頂いた。
新渡戸稲造の国際連盟事務次長時代(1919-1926)の大きな功績として、『オーランド諸島の領土紛争の裁定』の解決と『知的協力委員会(International Committee on Intellectual Cooperation ;ユネスコの源流)』を構成し知的対話を行ったことが挙げられるであろう。 世界中の叡智を集めて設立した知的協力委員会には哲学者ベルグソン(Henri-Louis Bergson 1859-1941)や物理学者のアインシュタイン(Albert Einstein 1879-1955)、キュリー夫人(Maria Salomea Skłodowska-Curie 1867-1934)ら著名な有識者12人が参加し、第一次世界大戦後に困窮が著しかった各国の生活水準の調査や知的財産に関する国際条約案を検討し、各国の利害調整にあった。 1922年8月1日に第1回委員会が開催された。『余の尊敬する人物』(矢内原忠雄著 岩波新書)の【『(新渡戸)博士の残した精神こそ日本国民の最も必要とするところでありませう』の言葉が、『日本国の天職』の自覚へと導く。 『時代を動かすリーダーの清々しい胆力』としての『人間の知恵と洞察とともに、自由にして勇気ある行動』(南原繁著の「新渡戸稲造先生」より)】の文章が思い出される今日この頃である。まさに『賢明な寛容』を備えた『真の国際人』である。『小国の大人物 出でよ!』(内村鑑三;1861-1930)。