一般社団法人がん哲学外来

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21世紀のがん哲学 樋野興夫
〜すこしの時間ご一緒しませんか?
ちょっと立ちどまり、一息つき、考えるときを持ち、歴史人に思いをはせる~

第45回 『高度な専門知識と幅広い教養』 〜 『理想とビジョンをつくり出す』 〜

2025年1月24日 病理診断業務に赴いた。 病理学は顕微鏡を覗きながら、大局観を持つことが求められる分野でもある。『森を見て木の皮まで見る』ことであり、マクロからミクロまでの手順を踏んだ『丁寧な大局観』を獲得する『厳粛な訓練』の場でもある。

その後、第242回南原繁研究会(日比谷図書文化館)にZoom参加する。 筆者は、2004年にスタートした南原繁研究会【初代代表、鴨下重彦 先生(1934年-2011年、東京大学名誉教授、国立国際医療センター名誉総長)、第2代代表、加藤節 先生(成蹊大学名誉教授)】の3代目の代表を2019年南原繁(1889-1974)生誕130周年を祝し、仰せつかった。

筆者の読書遍歴は【内村鑑三(1861-1930)・新渡戸稲造(1862-1933)・南原繁・矢内原忠雄(1893-1961)】であった。 南原繁は、内村鑑三と新渡戸稲造から大きな影響を受けた。 新渡戸稲造 校長時代の一高で学び、東大法学部に入学後、内村鑑三の聖書講義に出席するようになった。 東大卒業後、内務官僚から学者に転進し、ヨーロッパ留学を経て東大教授となり、戦後、東大総長に就任した。 教育改革に主導的役割を果して行く。

南原繁が東大総長時代の法学部と医学部の学生であった二人の恩師から、南原繁の風貌、人となりを伺った。 【南原繁は『高度な専門知識と幅広い教養』を兼ね備え『視野狭窄にならず、複眼の思考を持ち、教養を深め、時代を読む
具眼の士』と教わった。 南原繁は『教養ある人間とは、自分のあらゆる行動に 普遍性の烙印を押すことであり、自己の特殊性を放棄して 普遍的な原則に従って行為する人間のことである』&『それは人間の直接的な衝動や熱情によって行動する代りに、つねに理論的な態度をとるように訓練されることである。』(南原繁著作集第三巻)& 『時代を動かすリーダーの清々しい胆力』としての『人間の知恵と洞察とともに、自由にして勇気ある行動』(南原繁著の『新渡戸稲造先生』より)】という文章が鮮明に思い出される日々である。

南原繁は、『国民の理想とビジョンをつくり出すのは、根本において教育と学問のほかにはない』とも書いている。 これが、筆者の『南原繁の学びの原点』である。

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